【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「戻ってすぐに日奈とのことを周囲に否定する。琴乃のお母さんの誤解を解いて、お許しを得て、君と結婚したいんだ」

「それは……」

「琴乃?」

 玲さんの気持ちは嬉しかった。でも今彼が戻ってきたら、きっと復縁を望む日奈さんは動き出す。

 そうなれば、日奈さんの相手が玲さんであることを知っているマスコミは、また取材を開始するに違いない。

 玲さんはそういったことも予想している。そして今度こそ自分がいないときに流されたデマを払拭すると決めているようだった。

 だが、私はもうしばらくイギリスにいてほしいと言いそうになった。怖かったのだ。

 その時、日奈さんと会ったことを話せばよかったのかもしれない。でも私は結局躊躇した。

 彼は私を愛していると言ってくれた。気持ちは前から疑っていなかった。

 私達は相思相愛だとわかっていたのだ。日奈さんに嫉妬したわけではない。

 でも日奈さんの話は現実問題を私につきつけた。何よりそれが私には堪えた。

 今の私には愛する彼を支える資格がないのだ。

 このままではいずれ心配をかけて、彼の外交官としての立場を難しくする。足を引っ張るだけなのだ。

 周囲は玲さん以外、皆日奈さんとの復縁を望んでいる。

 彼女の美貌と聡明さ。カンヌ女優としての社会的立場、彼の外交官という仕事を考えれば、彼女の方がお似合いなのは言うまでもない。

 しかも、私は家族にさえ交際を反対されている。日奈さんと彼女の座を競う相手にもならない。

 反対というのも説得すればどうこうできる問題を超えてしまっている。母の病は海外赴任で亡くなった父が引き金。

 それがわかっていながら海外赴任が当たり前の外交官と交際するなんて、娘として絶対にやってはいけないことだ。

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