雨の降る日はジャズバーへ ――Cats that gather at night――
「美琴さんこんばんは……今日もおすすめでいいかな?」

「こんばんは。レンのおすすめでお願いします」

「美琴さんこの前桃が好きって教えてくれたから、ベリーニを作ります」


 カウンターに置かれたのは、普通のシャンパングラスよりも細長くてスタイリッシュなグラス。これはフルートグラスと言う名前で、細長いため炭酸が抜けにくいのが特徴。ジャズバーに通うようになってからお酒に興味を持ち、最近になってようやく知った知識だった。

 メジャーカップを使ってピーチ・ネクターを測って注ぐと、スパークリング・ワインを注いでステアをして完成した。

「え!? もう完成したんですか」

「シンプルだからあっという間に見えるよね。でも、桃の上品な香りが鼻に通って凄く良い香りだよ」

 レンはグラスをゆっくりと私の鼻に近づけた。鼻いっぱいに香る甘い誘惑が、早く飲みたいと思わせるほど……私の喉が虜になる。

 レンは手を優しく握るようにグラスを渡した。

「いただきます」
 一口ゆっくりと飲むと、とろけてしまいそうなほど濃厚な桃の甘みを、ワインの酸味がピシッと上品に整えた。

「桃の香りや甘さがワインの味が加わることで、後味が爽やかになり、凄く飲みやすくて美味しい!」

「今年はまだ果物の桃を仕入れてはないんだけど、ピーチ・ネクターを入れないで、桃をピューレ状にして作ると更に美味しいんだよね。今度仕入れたときにまた作るよ!」
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