雨の降る日はジャズバーへ ――Cats that gather at night――

第6話 雨の日に咲くスミレの花 前編

 それからはあっという間に目的地に着き、車が駐車した。

「ここがレンのお家? 立派な所だね」
「さぁ付いてきて! 美琴さんに見せたいところがあるんだ」

 玄関に上がると、地下室に続く階段が目に入る。
 私達は階段を下ると、付いた先には様々な楽器や機材が広がっていた。

「この部屋でいつも曲を制作しているんだ。なかなか見せる機会がないから少しドキドキしちゃうな」

 クスっと笑顔を向けるレンが可愛くて、楽器に関していくつも質問した。楽器を鳴らし、いっぱいの笑顔で説明している姿が、普段見ることがない為、愛しく感じる。

 いつの間にか時間は経ち、1階のリビングに移動した。そこはガラスの綺麗なテーブルに花が飾ってある素敵な場所だった。

「喉渇いたよね。美味しいワインが部屋にあるから座って待ってて」

 レンはそう言うと行ってしまった。椅子に座って一人で待って居ると、歌姫の事を思い出す。テレビで何度も出演して、どこに行っても歌姫の曲が流れる。それ程に国内で大ブームなのは知っている。だけど、今まで深く聞いたこともないし興味もなかった。私は軽い気持ちでイヤホンを付けると、スミレのデビュー曲を検索した。

 Your Tears Will Bloom into a Flower So Divine(あなたの涙は花のように美しく育っていく)という曲名が表示されてクリックする。

 真っ暗な映像から始まると、徐々に水色のライトに照らされたメンバーが映し出された。ピアノは寂しい感情を感じさせ、心臓の鼓動のようなドラム加わる。トランペットを高々と鳴らし別れを告げる。涙を流すようにベースが加わり鳴り響かせると、スミレは上を向きながら綺麗な涙を流し、甘い美しくしい歌声で歌い始めた。

 The warmth of holding him is sweetly etched onto my body.
(彼を抱きしめた熱は、私の体に愛しく刻まれる。)

 It clings deep to every part of me, drowning my soul, I suppose.
(その熱は、私の全てに深くまとわりつき、溺れるでしょうね。)

 Unlike mine, the layers of his warmth are slowly growing cold.
(私とは反対に彼の重ねた熱は少しずつ冷えてゆく。)

 When I wake, not a single trace of him is left in this room.
(目覚めると、部屋に彼の荷物は1つもない。)

 The passion you shared with him will surely pierce your heart with pain.
(彼と重ねた熱は、きっと貴方の心を刺すように苦しめるでしょうね。)

 Let your tears flow and flow, for you will bloom into a flower so divine.
(涙を流して、流して。花のように美しい貴方は育ってゆく。)

 Your sweet fragrance will turn into charm, captivating another soul someday.
(美しい花の香りは魅力に変わり、誰かを溺れさせるでしょうね。)

 For like a fleeting dream, all his warmth will fade away.
(夢のように彼の熱は消え去るから。)

 ……聞き終えると涙が出ていた事に気付く。私の胸は彼女の甘い歌声で締め付けられているみたいに感じ、夢中で聞いていた。放心状態で固まっていると後ろから声を掛けられる。

「凄いよね。初めて歌声を聞いたとき、僕も身動きが出来なかったことをよく覚えているよ」
「レンにとってスミレさんはどんな人?」

 私と目を合わせずに、悲しげな表情で遠くを見つめて呟いた。

「……初恋の女性かなぁ。忘れられないぐらい夢中だったよ」

 初めて見る顔に喜びは全く感じない。自分で聞いたくせにおかしいかも知れない、でもこんな姿を見たくなかったし聞きたくもなかった。

 悩んでいる最中、空のグラスを目の前に置かれて見つめていると、赤く染まった。

「この赤ワイン美味しいよ。長くなるけど、まずは出会いから話すね」

 それでもレンの事が知りたいくて、一口ワインを飲んでから話しを聞いた。
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