あなたの××××に触れたい
「いだたきます」と手を合わせ、厚みがあるベーコンとレタスとトマトがたっぷり挟まったBLTサンドに口をつける。

「んっ! おいしい」
「それはよかった」
「レオくんの料理もおいしそうですね」
「犬用とは思えないですよね」
「はい。本当に」

喜多川さんは目尻を下げて、小さくカットされた鶏むね肉をパクパク食べるレオくんを見つめる。そのまなざしは、子を見守る親のように慈愛に満ちている。

「レオ、おいしいか?」

料理に夢中なレオくんに優しく話しかける様子は、やはり溺愛という言葉がぴったりだ。

「レオくんにメロメロですね」
「自覚しています。もちろんよその子もたしかにかわいいですけど、レオが一番カッコいいし賢いなって思いながら、グルーミングの様子を見てます」

カットが不要なドーベルマンでも、グルーミングには二時間ほどがかかる。それなのに喜多川さんは外出せずに、ガラス越しにレオくんの様子を食い入るように見つめている。

「授業参観に来たパパみたいですね」
「パパか。たしかにそうかもしれないな」

ふたりで声をあげて笑い合う。
喜多川さんとの会話は楽しく、料理はとてもおいしい。

「そろそろ移動しましょうか」
「はい」

心もお腹も満たされ幸せな気分でカフェを出て、ドッグランに向かった。
大型犬専用エリアには、先客であるシベリアンハスキーとゴールデンレトリバーの姿がある。
仕事柄、犬や猫に触れる機会は多いけれど、複数の大型犬を一度に見るのは初めてで、否応なしにテンションが上がる。

「綿谷さん。リード持ってみます?」
「いいんですか?」
「もちろん」

喜多川さんからリードを受け取り、雰囲気に慣れるために場内を歩く。
好き勝手に走り回らず、私に寄り添って歩調を合わせてくれるレオくんはやはり賢い。
飼い主でもないのに、鼻高々にドッグランを二周回る。

「ドッグランデビューおめでとうございます」
「あっ、そうですね。ありがとうございます」

まさかお祝いの言葉をかけられるとは思っておらず、目をしばたたかせる。でも『ドッグランデビュー』という響きがおもしろくて、すぐに笑いが込み上げてきた。
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