ピンチの時にさっそうと現れたヒーローは、見た目以外は高スペック男子でした。
「完全に、私刑じゃない。ありえない!」
「まぁ、まさか他大陸まで飛ばされるとは、魔術師たちも思っていなかったと思うがな」
 怒り心頭なアメリアに、ウィズが穏やかな声でなだめようとする。
 が、どうにも逆効果だった。

「なんでそんな理不尽な目に合わせられて怒らないのよ!」
 八つ当たりのように叫ぶアメリアに、ウィズがゆっくりと首を横に振る。
「もう二年も前の事だ。怒りも消えたよ」
 あくまで穏やかな声音に、アメリアも様子を伺っていた他の面々も息をのむ。

 そもそも逆らう事も難しかった立場で逃げ回っていたのだ。
 国元で、言葉以上に嫌な目にあった事も多かっただろうが、そのうえで容姿を変えられ見知らぬ土地へと飛ばされたのだ。
 怒りも絶望もさぞ深かったことだろう。

 それでも前を向けたのは、ひとえにウィズの精神(こころ)の強さゆえだ。

「ウィズはすごいわ」
 アメリアは万感の思いを込めてウィズを見つめた。
 仮面の向こう側、その表情は分からないがふっと緩んだ気配に、ウィズがほほ笑んだことを知る。

「まぁ、人との交流を持つのが難しかったので、それだけでもどうにかならないかと国元を目指したが、今回、皆と旅をして、自分の甘えもあったのだと痛感したからな」
 そっと仮面に触れて、ウィズは笑う。

 虐げられる日々の中、容姿を隠すことを考えなかったわけでもない。
 だけど、隠してしまえば自分の中の何かが曲がってしまう気がして、頑なに顔をさらし続けた。
 しかし、今回仮面をかぶることで、明らかに他者の視線が変わったことを知ったし、その事で自分が変わることはなかった。

 だがそれは、屈託なく自分を受け入れてくれたアメリアの存在が大きい事に、ウィズは気づいていた。
 そのままの自分が受け入れられた経験があったからこそ、仮面をかぶっても卑屈になることはなかったのだ。

 真っ直ぐに自分を見つめた青色の瞳を思い出すと、心のどこかがふわりと温かくなる気がした。

(俺はこの恩を返さなければならない)
 だからウィズは、ひっそりと誓う。
 自分は大丈夫だと頑なに目をそらしていた、凍り付いた心を救ってくれたアメリアに。

「もし、今の話を聞いて嫌でなければ、ここに置いてもらってもいいだろうか?」
 ひそかな決意を胸に頭を下げたウィズに、内心の小躍りしたい気持ちをかくして、アメリアは重々しく頷いた。

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