朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師
朝の日差しで照らされたヒルの城の廊下は寝起きの目に痛いほどに眩しい。アサの城への連絡通路を真っ直ぐ進むと、やがて視界の色は金から純白へと変わる。
ランナを守るようにしてカレンは前方を歩いて先導する。その逞しいメイド服の背中を見てランナは思う。
(カレンさんて、メイドよりも護衛に近い気がする)
アサの城へと入って階段を下ると、案内された場所は一階のテラス。中庭に面していて、そこから見える花壇には朝日を浴びて輝度を増した白薔薇が咲き誇っている。
テラスには白く丸いテーブルがあって、すでにアサとモニカが座っていた。銀髪の夫婦は服装も純白で、朝に相応しく見た目も清々しい。
国王だというのに、アサは立ち上がって丁寧な口調でランナを迎える。
「おはようございます、ランナさん。どうぞお座りください」
後ろに回ったカレンが椅子を引いてくれたので、ランナは誘われるままに着席する。
すぐに執事長のデイズがテーブルに来て三人分のお皿やティーカップを配膳する。カレンはテラスの端に立って常にランナの方を見ている。やはり護衛のようだ。
熱々のトーストに挟まれた、とろけるチーズの香ばしい香り。朝食は片手でも食べやすいクロックムッシュであった。
「わぁ! おいしそう! いただきます!!」
ランナは今の状況を忘れて飛びつくようにしてクロックムッシュを両手で掴む。貴族の食事のマナーなんて知らないランナは、元来の明るさで朝の空気すら変えてしまう。
そんなランナの笑顔を見て、アサとモニカも自然と微笑む。しかしアサの何気ない言葉が、さらに空気を一変させてしまう。
「どうですか、ランナさん。昨夜はよく眠れましたか」
「……昨夜……」
急にランナの手が止まって笑顔も消える。昨夜のヨルとポーラを思い出して、自分が置かれている現実に引き戻された。
だが、そんなランナの反応だけで見抜いたアサは涼しい顔をしている。ランナの表情を曇らせる言葉を投げたのも意図的であるかのように。
「ヨルに会ったのですね。恐ろしい男ですよ、あれは。まさに悪魔ですね」
自分自身の別人格なのに他人事のように罵る。アサは銀髪だが、赤い瞳だけはヨルと同じ色。天使のようなアサも実は悪魔かもしれない。
しかし、朝しか活動できないアサがヨル人格に会った事があるかのように話すのは何か違和感がある。今度はランナがアサに探りを入れる。
「アサ様は朝4時から昼12時までの人格だと聞きましたが、それだと実際は短いですよね?」
今は朝の8時くらいなので、あと4時間ほどしかない。実際の活動時間としてはヒル以上に短いと感じる。
「はい。ですから僕は朝4時に起きて朝の城に移動します」
「私も朝4時起きですわ。アサ様とご一緒に過ごしたいですもの」
モニカはアサを愛しそうに見つめながら微笑む。それは純愛にしか見えなくて、呪いの効果だとは思いたくない。
この話だと朝4時起きで睡眠時間が削られる分、ヨルは寝る時間が早いのだろう。確かに昨夜を思い返すと、夜10時過ぎにヨルはポーラとベッドで過ごしていた。
(だめ、思い出すと……ポーラ姉さん……)
ヨルの奴隷となったポーラの姿を思い出すと、ランナの心はドロドロとした黒い暗雲に包まれて重く苦しくなる。
ランナを守るようにしてカレンは前方を歩いて先導する。その逞しいメイド服の背中を見てランナは思う。
(カレンさんて、メイドよりも護衛に近い気がする)
アサの城へと入って階段を下ると、案内された場所は一階のテラス。中庭に面していて、そこから見える花壇には朝日を浴びて輝度を増した白薔薇が咲き誇っている。
テラスには白く丸いテーブルがあって、すでにアサとモニカが座っていた。銀髪の夫婦は服装も純白で、朝に相応しく見た目も清々しい。
国王だというのに、アサは立ち上がって丁寧な口調でランナを迎える。
「おはようございます、ランナさん。どうぞお座りください」
後ろに回ったカレンが椅子を引いてくれたので、ランナは誘われるままに着席する。
すぐに執事長のデイズがテーブルに来て三人分のお皿やティーカップを配膳する。カレンはテラスの端に立って常にランナの方を見ている。やはり護衛のようだ。
熱々のトーストに挟まれた、とろけるチーズの香ばしい香り。朝食は片手でも食べやすいクロックムッシュであった。
「わぁ! おいしそう! いただきます!!」
ランナは今の状況を忘れて飛びつくようにしてクロックムッシュを両手で掴む。貴族の食事のマナーなんて知らないランナは、元来の明るさで朝の空気すら変えてしまう。
そんなランナの笑顔を見て、アサとモニカも自然と微笑む。しかしアサの何気ない言葉が、さらに空気を一変させてしまう。
「どうですか、ランナさん。昨夜はよく眠れましたか」
「……昨夜……」
急にランナの手が止まって笑顔も消える。昨夜のヨルとポーラを思い出して、自分が置かれている現実に引き戻された。
だが、そんなランナの反応だけで見抜いたアサは涼しい顔をしている。ランナの表情を曇らせる言葉を投げたのも意図的であるかのように。
「ヨルに会ったのですね。恐ろしい男ですよ、あれは。まさに悪魔ですね」
自分自身の別人格なのに他人事のように罵る。アサは銀髪だが、赤い瞳だけはヨルと同じ色。天使のようなアサも実は悪魔かもしれない。
しかし、朝しか活動できないアサがヨル人格に会った事があるかのように話すのは何か違和感がある。今度はランナがアサに探りを入れる。
「アサ様は朝4時から昼12時までの人格だと聞きましたが、それだと実際は短いですよね?」
今は朝の8時くらいなので、あと4時間ほどしかない。実際の活動時間としてはヒル以上に短いと感じる。
「はい。ですから僕は朝4時に起きて朝の城に移動します」
「私も朝4時起きですわ。アサ様とご一緒に過ごしたいですもの」
モニカはアサを愛しそうに見つめながら微笑む。それは純愛にしか見えなくて、呪いの効果だとは思いたくない。
この話だと朝4時起きで睡眠時間が削られる分、ヨルは寝る時間が早いのだろう。確かに昨夜を思い返すと、夜10時過ぎにヨルはポーラとベッドで過ごしていた。
(だめ、思い出すと……ポーラ姉さん……)
ヨルの奴隷となったポーラの姿を思い出すと、ランナの心はドロドロとした黒い暗雲に包まれて重く苦しくなる。