朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師
 ヒルは甘えてくるランナの肩を愛しそうに抱いて恍惚としている。これでは魅了の呪いにかかったのはヒルの方だ。

「分かった、オレにいい考えがある。次の休日まで待て」
「その日に何かあるの?」

 ヒルは瞳の色が見えなくなるほどに目を山の形に歪めて満面の笑みで答える。

「オレたちの結婚式だ」

(……え!? そんなの聞いてない!)

 ランナは演技も忘れて唖然とするしかなかった。結婚も突然なら結婚式も突然。そしてキスも。ヒルはいつも何もかも突然だ。
 だが自分で始めてしまった演技の流れで、ランナはわざとらしく満面の作り笑いで返すしかない。

「わぁ、う、嬉しい! 楽しみにしてるねぇ……!!」
「あぁ。幸せにしてやるからな、愛してるぜハニー!」
「私も愛してるわ、だ、ダーリン!」

(何なのダーリンって!? きもい!)

 ヒルのノリがいいのでランナも乗ってしまったが、この茶番に何の意味があるのか……でも、やはりヒルは親しみやすくて好感は持てる。
 機嫌が良くなったところで、ヒルは立ち上がると両腕を上げて大きな伸びをする。

「じゃあ、オレは仕事だから行く。なるべく他の城には行くなよ」
「……分かった」

 ノリは少年みたいなヒルだが、これでも22歳の大人で国王。昼だけ表に出る彼は、その短い活動時間のほとんどを仕事で費やしてしまう。
 優雅に朝の時間を過ごすアサ、長い夜を満喫するヨル……こんなにも不公平な中でヒルの性格が歪まないのが奇跡に思える。
< 30 / 86 >

この作品をシェア

pagetop