朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師
 そしてルアージュもヒルの非礼を気にしていない様子で言葉を続ける。

「ところで、ヨル様はどちらに? 久しぶりにお会いしたいですわ」
「アサもヨルも式には来ないぞ。あぁ、ヨルは夕方くらいに来るかもな」
「まぁ、そうですの。それは残念ですわ」

 上品な口調ではあるが目は笑っていない。ルアージュはヒルを気にしないのではなく『眼中にない』ように感じられる。
 ルアージュはランナに言葉もかけずに背を向けて神殿の方へと歩きだす。しかし今のヒルとルアージュの会話には疑問点が多すぎる。
 ランナは大声で問いかけたいが、内容が内容なのでヒルの耳元に近付いて小声で話しかける。

「え、ちょっと、アサ様とヨル様が来るとか来ないとか、どういうこと?」
「あぁ、世間的には三つ子の三兄弟。国王は三人いるって事になってる」
「へ……三つ子? 三人いる?」

 もう無茶苦茶すぎて気の抜けた声しか出ない。世間にはヴァクト陛下の三重人格は隠しているらしい。よく考えたら当然かもしれない。
 ランナは今まで辺境の街に住んでいたから知らなかった。三つ子が三人同時に王位に就いた形になったジョルノ国は、なんとも奇妙な国だと思う。

「私が第三王妃って事は、ヒルくんは第三国王なんだね……」
「うぉぉ! そうなんだよ! 不公平だ、理不尽だ!!」

 アサが第一国王、モニカが第一王妃。ヨルが第二国王、ポーラが第二王妃。そしてヒルが第三国王、ランナが第三王妃という事になる。
 その数字は権力の順ではないし優劣もないが、なぜ朝昼夜の順にしないのか。圧倒的に仕事をする時間が長いヒルにとっては屈辱で不満しかない。
 ちなみにヨルは順番や数字は気にしない、というか無関心らしい。

「それとヒルくん、隣国の王女様を覚えてないって失礼すぎない?」
「オレはあまり会ってないからな。ルアージュはヨルと親交があるみたいだな」

 昼の時間の記憶しか持たないヒルは、別人格の交友関係すら把握してない。

(そういえば今日はポーラ姉さんもモニカ様も来てない……)

 そもそも二人は招待していない。二人を警戒しているヒルの意向だが、別人格の王妃が祝福する・されるという複雑な心境と状況への配慮もある。
 これに関しては今後の心配はない。アサはもう挙式を終えているだろうし、ヨルは性格的に式は挙げないと思われる。
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