朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない
第5話 閑話休題と揺らぎ
そこで話は冒頭にもどる。

有希は今日もひとつも変わらない声色で僕に命令する。



「テイクアウトで。トール、ホット、ロイヤルミルクティー、オーツミルク変更で」



「はぁ? なにそれ呪文?」



「病院の1階、カフェあるでしょ。そのまま言えば通じるから。いますぐ」



有希は今日も会った瞬間に、挨拶もなしにワガママ三昧を言う。



「……ハァ、わかったよ。いやもう忘れた。もう一度言ってくれ」



僕がメモとペンを取り出すと、有希はため息をついてそのペンを奪ってきた。



「バカ、あほ、あんぽんたん、おたんこなす、鳥頭」



「言い過ぎじゃね? てか、バリエーション豊かじゃない? さすがの僕も泣くぞ?」



「一緒に行ってやるから、湊月もついてきなさい」



いかにもフンしょうがないわねと言いたげな様子が、ぶっちゃけめちゃくちゃ可愛い。



最近の僕はもう有希に心を全部もっていかれていた。

有希の為ならなんでもしてやるとか、下僕を極めた思考を持っていたけれど、有希の方は全然相変わらずなのであった。



「何、お茶くらいでニヤニヤしてんのよ。このうすらバカ」



ほら。この通りである。
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