銀河の雫
けど、彼の意思は固く、何を言っても心を変えてはくれなかった。

別れ話の後、最後に彼は、ぽつりと言った。

結婚して幸せになるイメージがまったく湧かない……と。

子供の頃、父親が愛人の家に入り浸りだった。

そのことで母は祖母に執拗に責められ虐められ、肩身の狭い思いをしていた。

だから幸せな家庭というものを知らない。

一生、結婚するつもりはない。

だから幸せに育った君には、俺の気持ちなんて分かりっこない。

そう話していた。

結局、あたしは自分の生い立ちを一番大好きな彼にさえ、正直に言うことができなかった。

自分を飾り立て、偽ったことを後悔した。

彼に強く惹かれた理由も同時に知った。

無意識に心が共鳴していたことに、今更ながら気がついた。

けれど、後から真実を伝え弁解したところで、きっと真意は伝わらない。

もう手遅れ……ということにも。

結局、本当のことも伝えられないまま、喧嘩別れしてしまった。

まるでピエロだ。

生まれながらにして、高い能力や恵まれた容姿を持ちながら、幸せになることもできない。

ずっと孤独を背負ったままだ。

真に誰かを愛すことも、愛されることもなかった。

それから二十年以上経った。

それなのに、まるで亡霊にでも取り憑かれたように、心の中で彼を、ずっと、追い求め続けている。




だから、しずくさんにはあたしと同じ思いをして欲しくはなかった。





薫さんは目に涙をためて私を見て言った。

「所長、しずくさんと話してるときだけだよ、あんなに目が優しいの」

「薫さん……」

「だから、方法はどうであれ、絶対にこのまま喧嘩別れなんてダメだからね」

「……」

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