銀河の雫
――コンコンコン
『はい』
「失礼します」
ドアを開けると、そこは白い壁に囲まれた無機質な個室部屋だった。
ベッドに横たわった女性は、私を見て身体を起こそうとしている。
「あっ、起き上がらなくて結構ですので……」
「ごめんなさいね、こんな格好で」
「いえ、私こそ急に……申し訳ありません」
私はその女性の背中を支え、体を起こすのを手伝った。
「あなた……月浦さんね、月浦しずくさん」
ベッドで寝ていた女性は、冷泉の奥様だった。
十五年ぶりに再会した奥様は、妖艶で美しかったあの頃とは違い、顔にも手にも深いしわが刻まれ、瘦せ衰えた姿になっていた。
「はい、ご無沙汰しています」
「そうね……あの後、すぐにまた会えると思っていたのに、ずいぶんと時間が経ってしまったわね」
「……今日は、お聞きしたいことがありまして……」
「えぇ、なんでも聞いてちょうだい」
「お見合いのとき、息子さん……陽さんは、自分から仲人さんに返事をしたいとおっしゃいました」
「えぇ」
「けれど一週間待っても返事はなかったと聞きました……どうして……どうしてですか?」
奥様は、私の顔を見てほほえんだ後、窓の外に視線を移した。
「……あの子ね、小学校四年生まで青森の私の実家で育ったの」
「はい……」
「とても活発でね、よく笑う明るい子だった。けど、こっちに来てから変わってしまった……私は、随分、心を痛めてたのよ」
「そうだったんですね……」
「けど……唯一、陽が心を動かしたものがあったの。それはね……」