銀河の雫
その後、お店に彼が来ることはなかった。
少しして、私は身ごもっていることに気が付いた。
それが陽だった。
彼が医師で、奥さんがいること以外は、ほとんどなにも知らなかった。
家がどこなのか、働いている病院の名前も、全く。
かすかな東北訛りがあったことだけは、なんとなく気が付いていた。
その後、青森で陽を産んで、また夜の銀座で働いた。
陽は実家の母に預けたままだった。
いつかは一緒に暮らしたいと、必死に父親の借金返済と仕送りを続けていた。
借金を完済し終えると、私は銀座から仙台の国分町のお店に移った。
少しでも陽の近くに行きたかった。
陽は幼稚園、小学校と進むと、目鼻立ちこそ私に似てるけど、明らかに私とは違うって、分かったわ。
非凡な才能に恵まれていると感じた。
勉強もスポーツも突出していた。
いつも、陽を立派に成長させたいと願っていた。
私のような人生を送って欲しくはなかった。
大学に入れて、きちんと教養を身につけさせて、彼の才能に見合った職業に就かせてあげたいと。
そのためにはもっと、もっと、働かなければならない。
けれど、若い頃からの無理な生活で、私はすっかり肝臓を悪くしてしまった。
お店を辞めようかどうか迷っているときに、偶然にも冷泉に再会した。
接待で連れられて来られたようだった。
それがきっかけで、一人でも時々、お店に飲みに来てくれるようになったの。
でも陽のことは、なかなか言い出せなかった。