銀河の雫
……残酷よね。
奥様には本当に申し訳ないことをしたわ。
実家に戻って、どんなにか肩身の狭い思いをしたことか。
人の幸せを奪ってまで幸せを手に入れて良かったのかって、自問自答し、自分を責め続ける日々だった。
出て行った前の奥様と、その間に生まれた三人のお子さんのことを想わない日は、一日もなかった。
陽には、おばあちゃんが余命わずかということは告げずに、そのまま青森から岩手に無理矢理、連れてきた。
母は陽に悲しい思いをさせたくないって、どうしても病気のことは言わないで欲しいって、私に縋った。
だから理由も分からず引き離されたことで、陽に恨まれたし、おばあちゃんの死に目にも合わせてあげられなかった。
陽と私の溝は余計に深くなったと感じた。
離れて暮らしていたせいもあって、陽は幼い頃からどこか他人行儀で、私に甘えた態度を取ったことなど一度もなかった。
優秀な陽を医師にしたかった。
……けど、陽はそれを頑なに拒んだ。
私や主人と暮らし始めてから、明るかった陽は変わってしまったと感じた。
無表情で、無感情で、何も欲しがることのない子だった。
そして、どんなに説得しようとも医大の受験だけはしてくれなかった。
きっと、私や父親のことを、恨んでいるんだと思ったわ。
大学も学費以外は仕送りも受け取ってくれず、自分でバイトをして生活していた。
きっと東京で独りで苦労したと思う。
陽と年の離れた次男や長女はここで生まれ、何も苦労など知らずに贅沢するのが当たり前に育った。
陽だけは、子どもの頃から、どこか自分を責めて、戒めているようにすら感じた。
そんな陽が不憫で可愛くて、どうにかして幸せになって欲しいと、心から望まずにはいられなかった。
「あんな陽だけど、子どもの頃、ひとつだけ関心を示したことがあった。それが……しずくさん、あなたなの」
「えっ……私?」
思ってもいない言葉だった。