銀河の雫
……どうにか、このことを陽さんに伝えたい。
できれば、少しの間でも帰国して、直接会って一緒の時間を過ごして欲しい。
すれ違ったまま、会えないままで、最後を迎えて欲しくない。
それは、私のわがままなのだろうか。
奥様も院長先生も、息子や娘に心配を掛けたくないと思って、秘密にしている。
それを部外者の私が勝手に伝えてしまうっていうのは、どうなんだろう……
けれど、奥様の話を聞いて初めて、所長がどんな人なのか、理解できた気がしていた。
自分と入れ替わりで出て行くことになった、前妻とそのお子さんたち。
少年だった所長はどんなにか、心を痛めていただろう……
父親と同じ医者になることも、家庭を持つことも選択することはなかった。
所長はきっと、自分が幸せになることが許せなかった。
幸せに繋がることは、受け入れられず生きてきたんだと知った。
小学校四年生の頃、私は冬の空を見上げていた。
中二の彼が通りかかって、一緒に星空を見上げた。
「嫌なこと全部、消えてくみたい」
「……ほんとだな」
私の言葉に白い息を吐きながら、彼は確かにそう答えた。
……あのとき所長は、どんな気持ちで、夜空を見上げていたのだろうか。