銀河の雫
「来て」

タクシーを降りると、私の手を取り、歩き出す。

この数日間よく通っていた、見覚えのある病室の前に着いた。

所長は目を閉じ、大きく息をした。



――コンコン、コン



ドアが開くと、病室の窓から降り注いだ光に一瞬、目が眩んだ。

背中をそっと押され、一緒に中に入る。

奥様はベッドの上で身体を起こし、こちらを見ている。

息子の顔を見ると、安堵した様子でくしゃくしゃな表情に変わった。



ベッドの横には、冷泉院長と白衣を着た男性が二人、スーツを着た男性も立っている。



「遅くなってごめん」

「いいの……陽……遠いところからよく来てくれたわね」



奥様は所長から私に視線を移す。

「しずくさん、あなたが連れて来てくれたのね」

首を横に振ってほほえんだ。

院長先生が静かに話し始める。

「陽、紹介する、新院長の優真、副院長の橙真、事務長の陵真……」

「みんなお前と血を分けた兄弟だ」

室内の空気が一瞬、緊張を帯びる。


「……あの日、僕たちが出て行くとき、玄関先ですれ違ったの、覚えてますよ」

優真さんがゆったりとした口調で話す。

ふたりもうなずく。


「陽さん、あなたが、今回の人事を了承したと聞きました……」

「はい、……あなたたちに全てお任せしたいと思っています」

「そうですか……ところで、ずっと日向姓のままなんですね……それは何故ですか」

「それは……」

「私たちに対する贖罪ですか」

「……あるいは……そうだったのかも知れません」

「医者を志さなかったのも、……独身なのもそのせいですか」

「……」

所長は目を伏せた。

思わず、所長の手をそっと握る。

その手は冷たく、かすかに震えているように思えた。

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