銀河の雫


数時間後、病室には所長と私だけが残っていた。

奥様は、安心した表情で眠っていた。





ふたりで病院の屋上に出た。

そこは、凍てつくような澄んだ空気。

銀色の月明かりが、所長の顔を優しく照らし出す。


「母の手前、みんなの前ではあんな感じになったけど」

「……はい」

「君も、あぁ答えるしかなかったと思う。母を安心させてくれて本当にありがとう」

「……」

「きちんと話をさせて欲しい」

向かい合わせに立ち、顔を見上げてうなずいた。

「君の前ではいつも格好つけていたけど、ふたを開けてみれば見ての通りだよ」

「弱い人間だから自分の殻に閉じこもったり、心の中で父や母を恨んだりしてた」

ほほえんでうなずく。

「子どもの頃だってそうだよ。……君を守ってるつもりが、俺が君に支えられてただけなんだ」

それは違うと、首を横に振る。

「一度は君を幸せにしようって、心に決めて……俺から返事をするって言ったのに……それも、結局、できなかった」

なおも首を横に振る。

「君が俺の前に再び現れて、また同じ過ちを……君を傷つけて泣かせて……謝ってばかりだった」

「それはあなたが優しいから……」
「違う」
「違わない」

彼の大きな両手をぎゅっと握りしめた。

「聞いて。子どもの頃、私、本当に孤独だった」

「あなたがいてくれたから、つらいことも半分になった」

「大也だけが生きがいで、他人なんて信じられないって、卑屈になってた」

「けど、あなたは違った。私を辞めさせまいと必死になってくれた」

「困ってる人達を一人でも多く救おうと、夜中まで稟議書に目を通してた」


「最後に一度だけ、人を信じてみてもいいかなって、所長を見て思いました」

「月浦さん……」

大きな手が私の手を握り返してくる。


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