銀河の雫

第一章 糊塗



「月浦さん、また社員さんに質問してくれたの? 助かる~」

「本当、月浦さんがいろいろ教えてくれるから、安心だよね」

同期の仲間が、代わる代わる話しかけてきた。

「ううん……私は、ほら、この業務だけだから」

七か月前に十人以上まとめて、この大手事務センターに配属された。

充実した日々にそれなりに満足している。

人見知りを隠して、円滑にコミュニケーションを取ってきたつもりだった。


いつの間にか、周りは別の業務も兼任するようになった。




みんなの分まで、派遣先の社員さんに質問をするようになっていた。

どうして私にだけ別の仕事を振ってもらえないんだろう。

心には、最近、薄い霧がかかっているみたいだった。

きっと社員さんのうっかりかな。

すぐに私にも新しい業務を振ってくれるだろう。



……けど、もし、何も仕事を振ってもらえなかったら……



午後三時を告げるチャイムが鳴った。

「あぁ、アレの時間だね」

顔を見合わせると、みんな立ち上がり、音楽が鳴り始めるのを待った。


『♪腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動……』


このオフィスでは、午後三時になるとラジオ体操が始まる。

終日、座り仕事をしているスタッフの運動不足解消の為なのだろう。

皆、いつものように気だるそうに、腕を上げ体操を始めた。


当初は、この異様な光景にとても驚いた。

子どもの頃は当たり前のようにやっていた。

けど、ここのは、まるで違って思えた。


伸び伸びと体操をすれば、プリンターに指をぶつけ、机上のペットボトルを倒しそうになる。

電話が鳴れば、すぐに誰かが対応することになる。

なんで今更……と思いながら、最近は、無感情に手足を動かしている。



けど、この音楽って、いつまで経っても昭和。

もう少し今風な音楽なら、いいんだけど。
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