銀河の雫
「月浦さん、営業さんが呼んでるよ」

同期の一人が面談を終えて、戻って来たのだった。

「契約更新どうだった?」

「形式的な感じだったから五分で終わったよ」

「普通に三か月更新?」

「うん、今回も三か月更新だった。それと来月から時給百円アップだって」

「……百円も!?」


残業代も含めて一か月一万五千円。

一年でざっと十八万。

年収が上がれば、息子の大也の学費に使える。

NISAの積み立ても増やせるし、推し活で東京や大阪へ遠征もできるな。

それでも残ったら……



たった百円、されど百円だ。




「……ありがとね、じゃあ、面談行ってくるよ」

オフィスの廊下へ出た。

そうか……

それなら私だって、契約打ち切りは、さすがにないだろう。

だって、頑張って仕事を覚えてきたんだし。




――コンコン、コン

緊張で震え出しそうな手で、小会議室のドアを叩いた。




思い切りノックをしたはずだった。

なのに、握りこぶしはドアにぶつかると、かすれた金属音を立てた。
< 3 / 163 >

この作品をシェア

pagetop