銀河の雫
所長はなおも肩を震わせながら、おかしそうに笑いをこらえている。

消え入りそうな声で必死に答えた。

「とてもモテそうな方だなと思いました」

「……そっか」

「はい」

「ありがとう、お世辞でも。……今日はテレビのリモコンは持ってこなかったの?」

「持ってきてないです。あっ……それも聞いてたんですか?」

「……まぁ」

クスクスと笑う所長。

私もつい、つられて笑った。

「それとさ、金曜日の終業のチャイムで急に立ち上がったよね……」

「えっ、気が付いてたんですか?」

「なんかさ、急に立ち上がって、くっ……斎藤さんと、高橋さんがびっくりしてて……」

「あ……あれはですね……前の会社で……チャイムが鳴るとラジオ体操が始まって」

「へぇ、そんな会社あるんだ」

「そうなんです」

「……いろんな会社、見てきたんだね」

「……あぁ、……まぁ」

「いろいろ苦労してんだ。……じゃあ他の仕事してるから。終わったらチェックするから渡してね」


胸の鼓動がうるさい。


私、どうかしてしまったのかな。

こんなイケメン上司にからかわれてドギマギして、いい歳して本当に間抜けだわ。



そういえば、笑ってるの初めて見たな。

クールな人かと思ってたけど意外と気さくな感じでびっくりした。

人の少ない終業後だから気を抜いてる?

それとも私のこと、まるで異性として意識していないからかな。

そうか、格好つける必要ないもんな。

きっとそうだ。


『俺のこと覚えてないの?』


けど、他に……どこかで会ったこと、あった?



……いや、まさかね。


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