銀河の雫
第二章 穹窿
――日曜日
朝から雨がしとしと降り続いていた。
バスを降りると傘を広げた。
コートの袖をめくり上げて腕時計を見る。
針は午後二時を指している。
開演まであと三十分。
敷地を散策することにした。
霧が煙る森が視界に広がる。
雨粒が滴り落ちる裸の木々を眺めながら、ゆっくりと歩く。
静寂の中、傘に当たる雨粒の音がポツ、ポツと響いた。
星が見えないからなのか、雨が降ると、ここに自然に足が向く。
ひとりで過ごす、この時間が好きだった。
エントランスを入り、辺りを見渡す。
冬の訪れが近づいた雨の天文台は、人もまばらで閑散としていた。
外の景色が見えるベンチに腰を掛けた。
葉が落ちた木々は、とても寒々しく感じる。
ガラスに雨が打ち付けているのを、ぼんやりと眺めた。
街の喧騒から抜け出したこの空間が、日常をリセットしてくれるようで心地よかった。
「……もしかして月浦さん?」
名前を呼ぶ声に振り返る。
一瞬、見間違いかと思った。
けれど、そこにいたのは紛れもなく、日向所長だった。
「えっ、どうして……お疲れ様です」
思わず立ち上がり、息を呑む。
いつもは三つ揃えのスーツだけど、今日は休日のカジュアルファッション。
黒のチェスターコートに、ダークグレーのワイドパンツ。
夜空を連想させるような、ターコイズブルーのニット。
細いフレームの眼鏡をかけている。
会社ではコンタクトなんだと気が付いた。