銀河の雫
「……急に帰って来いなんて、いつもは正月でも来るなって言うくせに」
「実はな、しずくに縁談の話が来てるんだ」
「縁談って、お見合いってこと?」
「んだ、相手はなんと、聞いで驚ぐな、あの冷泉病院の長男だ」
「はぁ? 冗談だっちゃね?」
「んなわげねえっちゃ、写真だってあるがら。ほれ見でみろ」
私は渡された写真を見つめた。
それは十人ほどの集合写真で、想像したようなお見合い写真のそれではなかった。
「どれだがわがんね」
「この人だ」
母が指差したその人は、眼鏡をかけて少し痩せた感じの男性。
真面目そうな公務員風とでもいうのだろうか。
ピンボケではっきりと顔は分からない。
「……べづに好みでもなんでもねぇし、興味ねえがらこどわっといで」
「こどわる? 写真を見て会いもしねえで。失礼だがら無理だ!」
「はぁ? どんな言い草? 法事だなんて嘘ついで呼びつけで、岩手くんだりまで来させで、急にお見合いしろってほうが失礼だべど」
「いいがら。明日の午前十一時に、猊鼻渓んとごのレストハウスだがらな!」
「……わがったよ、いげばいいんだべ!」
売り言葉に買い言葉とは、まさにこのこと。
私は母と大喧嘩になり、そのまま家を出て、車にキーを差しエンジンをかけた。
急に呼んどいてなんなのよ、全く。
私、まだ二十三歳だよ。
自由恋愛を諦めて親の決めた条件だけの相手と結婚するなんて、想像しただけでぞっとする。
結婚するなら、私を本当に理解してくれる運命の人。
そうじゃなきゃ一生独身のほうがまだマシ。
あの写真の人だって、運命もナニも全く感じない。
運命ならきっと、私にだけはその人が光り輝いて見えたはず。
だったら断られるように仕向ければいいんだ。