銀河の雫
きっと、これが本当に最後……
エレベーターの扉が開く。
所長が壁にもたれて腕組みをして待っていた。
「おはよう」
私に気が付くと、軽く手を挙げ、ほほえんだ。
その姿に、一瞬、鼓動が跳ね上がる。
前を歩くその背中は、凛としていた。
窓から朝日が差し込む。
黒い髪の毛は、日に当たると少し茶色みがかって見えた。
手櫛を通したら、柔らかくてすっと通りそう。
……こんな状況下でも、不謹慎にも見とれてしまうほどだ。
昨日と同じ斜向かいに座る。
「昨日は出張帰りで、なんの聞き取りの準備もできていなくて、申し訳ない」
「そんな……こちらこそお忙しいのに、申し訳ありません」
「……昨日、あの後、二人の方に聞き取りをしました」
「二人?」
「安藤さんと高橋さんです」
「……何を聞いたんですか」
「はい、誤送信が起こった直前の昼休みに、月浦さんと安藤さんが話した会話の内容です」
「……あっ」
「思い出しましたか?」
「……はい」
「その話と同じ内容を前日の残業中に私とも話しましたよね」
「……はい」
「月浦さんは私に言いましたよね、職員のチェックは絶対だと」
「……はい、言いました」
「そんな月浦さんが、勝手にメールを送信するなんて私には信じられません」
「……」
「それと、高橋さんにもあの時間帯に、トラブルを見聞きしなかったか聞きました」
私はごくんと、唾を飲む。
「高橋さんは、最初は言うのをためらっていたけど、勇気を出して話してくれました」
黙ってうなずく。
「青山さんが月浦さんのPCを操作して、勝手に送ってしまったように聞こえたと言っていました」
「……」
「間違いないですか」
「……はい……間違いありません」