銀河の雫
しんと静まり返った小会議室。
しばらくすると、ノックの音が聞こえた。
「……はい」
扉が開くとそこには、所長と青山さんが立っていた。
ひとつ離れた席に青山さんが座る。
「……月浦さん」
青山さんが口を開いた。
「はい」
「勝手に誤送信をして、それを月浦さんのせいにしました。本当にすみません」
立ち上がると、深く頭を下げた。
「……所長と親密そうな月浦さんがどうしても許せませんでした」
「青山さん、私こそ、仕事が遅くていつも所長を付き合わせてしまって……」
立ち上がり、頭を下げる。
「でも、親密なんて誤解です。単に残業をしていただけですから」
青山さんは所長の顔を見て、何か言いたげだった。
所長は無表情のまま、一点を見つめている。
「今までも、所長と親しく話している女性は許せなくて。辞めるように仕向けていました」
「……」
「所長、やっぱり、私、退職しようと考えています」
私は、所長と顔を見合わせうなずく。
「月浦さんも私もあなたが辞めることは望んでいません」
私は青山さんを見てうなずいた。
「……でも……」
私は静かに口を開いた。
「私が無神経なせいで、あなたを追い詰めてしまったんです。辞める必要はありません。青山さんが辞めるなら、私も……」
「それは違います。私が勝手に嫉妬して……」
何度も首を横に振って両手で顔を覆い嗚咽した。
「間違えて月浦さんの名前でメールを送ってしまったということにしませんか」
「えっ……でも……そんな……」
「私もそれがいいと思います」
「でも……」
青山さんはまだ、ためらっていた。
「もし、今回のことで青山さんが辞めてしまったら、月浦さんも私も苦しみます。……ふたりに免じてそうしてもらえませんか」
私も黙ってうなずいた。
「……分かりました。……でも、私、ちゃんとみんなの前で話します」
所長と目を合わせ、ほっと胸を撫で下ろした。