銀河の雫

第三章 奔流




――日曜日





駐車場に車を停めた。


奥の森には深い霧が湧いている。

傘を広げ、白い壁が弧を描くアプローチに沿って、ゆっくり歩みを進める。

見覚えのある傘が空を見上げている。

「止みそうにないね」

声をかけると、彼女が振り返った。

「……偶然ですね」

彼女がぽつりとつぶやく。

「本当、偶然」

言葉をなぞるように応えた。

「日曜日は雨が多いね」

傘を上げ、空を見上げる。

細かい雨粒が空から落ちてくる。

「……今日は会えそうかなと思ってた」

「はい……私も」

彼女は一度、視線を落とし、ゆっくりと話し始めた。

「私、思い出したんです。どうしてお見合いを断ったのか」

黙ってうなずく。

「院長の息子が商店街の娘と縁談なんて、何かの間違いだって……」

俺に歩み寄り、言葉を続ける。

「仲人さんから催促されてるって、母にせかされて、売り言葉に買い言葉で……」

「……そうか」

低い声で淡々と答えた。

「でも、どっちから断ったとか、関係ないですよね。だって……」

黙ったまま、彼女を見つめ返す。

傘に当たる雨粒の音だけが響いていた。

彼女は少し顔を紅潮させ、くるりと向きを変えた。


「……中に入ろうか」

雨の天文台は、人もまばらだった。

席に着くと、ドーム型の天井を見上げる。

徐々に視界が夕闇に染まり、だんだん薄暗くなる。

やがて、満天の星空が空一面に広がった。



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