銀河の雫
あれは……
冬の始まりの頃だった。
残業中、デスクに置かれたままの携帯が鳴った。
「はい」
『お兄ちゃん、元気?』
「愛有沙か。どうした?」
『うん、お兄ちゃんの声が聴きたくて』
「……用がないなら切るぞ」
『待って。急なんだけど、今から最終の新幹線で帰ってきて』
「はぁ?」
『同窓会のお知らせ来てたの。明日だって』
「同窓会?」
『そう、高校の』
「いいよ、別に行かなくて」
『ダメだよ、行くって言っちゃったもん』
「はぁ?」
『司会進行役を頼みたいって言われて、断れなかった』
「お前っ、なに勝手に」
『お願いね。じゃ(ガチャ)』
……急に同窓会だなんて。
卒業以来、誰にも会ってなかったな。
あいつらどうしてるだろう……
その日の深夜。
タクシーを降りた。
鞄の奥底に眠ったままだった、実家の鍵を取り出す。
「お兄ちゃん、お帰り~」
扉を開けると、パジャマ姿の妹が玄関に立っていた。
「ただいま」
「待ってたよ」
「……みんなは?」
「もう、寝ちゃった」
「そうか……お前、また背、伸びたな」
「うん、百六十九センチ」
「そうか」
「私、もうすぐ受験じゃない? 東京のこと教えて」
「はぁ?」
「お兄ちゃんと同じ大学に進学したくて、ねぇ、いいでしょ?」
思わずため息をつく。
まるで仔犬のような目で見つめてくる。
「……分かったよ」
「じゃあ、掛けておくからジャケット脱いで、着替えて。ゲボゲホッ……」
「風邪ひいてるのか」
「うん、でも平気」
「あのなぁ、来週も月曜から仕事なんだぞ。移すなよ」
「ゲホゲホッ、このキャンパスって……」
「もう、寝るか?」
「めったに帰って来ないじゃん、もうちょっと……」
開放されたのは外が明るくなり始めた頃だった。