キスから始まる恋は甘くて苦い
「乗って」

 靴を履いたほたるの前に背中を差し出す。

「歩けます」
「いいから、ほら」

 蒼一はほたるを強引におぶって、外へ出ると傘を開いた。

「これだけ持って」

 傘の柄を託し、荷物を後ろ手に持ってほたるを背負い直す。

「歩きます。遠いし、重いし……」
「黙ってろ」

 俺のせいでこんなに弱ったんなら――

「ほたる……ごめん」

 静かな雨の中、近いのに遠くから声がするよう。

 どうして謝るんだろう?

 あなたはやっぱり、こんなに優しいのに。

 熱が上がってきたのか意識がもうろうとして。

「しばらく、会いに行くのはやめるよ」

 蒼一の声が、ひどく憔悴(しょうすい)しているように聞こえた。


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