キスから始まる恋は甘くて苦い
 そうだ、知らせなきゃ。

 もう大丈夫だって、蒼一さんに。

『しばらく、会いに行くのはやめるよ』

 ふと、記憶に残った最後のセリフを思い出して。ほたるの顔から表情が消えた。

 あれは、夢じゃなかったんだ……

「あら。起きて平気なの?」

 1階へ下りてリビングへ入ると朝子が心配そうに近寄ってきた。

「うん。熱は下がったみたい」
「そう、良かった。でも今日は家にいなさいね?」

 念を押すように頭を撫でてくる母にほたるは素直にうなずいた。

「いいかげん着替えなさいよ。昨日は『この服じゃなきゃ嫌だー』って子どもみたいにダダこねてたんだから」
「えっ?」
「熱で機嫌悪かったのかもしれないわね」

 記憶がなくて首を傾げるほたるに、朝子はふっと笑みをこぼした。

「そういえば、あなたを送ってくれた子」
「そ……辰巳先輩?」

『蒼一さん』と言いかけ、ほたるは慌てて言い直した。

「そうそう、辰巳くん。彼、すごく心配してたなあ」

 カマをかけたせいか朝子の口調はどこか芝居がかっている。
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