キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene28 紫陽花

 1日静養したら体は随分元気を取り戻した。
 精神的には下降気味で、ほたるは現実から逃れるようにテスト勉強に没頭した。

『毎日10問解くこと』

 問題集に取り掛かろうとすると、蒼一との約束がよぎって喉元が熱くなった。それでも、約束を守るために昨日の分と合わせて20問をがんばって解いた。
 あれから、メッセージは既読になったけれど返答はなかった。

 もう会わないつもりなの?

 何度もよぎる不安。
 あのとき受け入れていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
 
 私のこと、嫌いになったかも……

 嫌な想像にほたるは首をぶんぶんと横へ振った。
 変な言い方をすると、体目当てなんじゃないかとは何度か思ったことはある。だけど、優しい笑顔を見るたびに「それは違う」と感じた。
 そもそも蒼一なら引く手数多(あまた)だし、もっと素敵な人が世の中にはたくさんいるのだから。

 だったら、どうして私と一緒にいてくれるんだろう?
< 121 / 199 >

この作品をシェア

pagetop