キスから始まる恋は甘くて苦い
 蒼一さんは優しいから……放っておけないだけなのかもしれない。

 出逢ったときの私は不安定だったから。

 そうやって冷静に振り返れるほど落ち着きを取り戻すことができた。それは蒼一のおかげだと今ならわかる。

 心配してくれて、安心させてくれて。

 ……好きになってしまった。

 思えば、ずっとそうだったのかもしれない。
 自覚するのは遅かったけれど、離れることだけは考えられなかった。

 好きな人にキスしてもらえるなんて、私は幸せだったんだな……

「ああ、ほたるちゃん。おじゃましてるよ」

 面会時間に病院へ訪れ、個室の引き戸を開けるとすでに雅也がいた。気持ちを切り替えてお見舞いに来たほたるは彼の笑顔に安堵した。

「……こんにちは」

 ホッとした自分に、気を張っていたことを自覚して。

 気を抜いたら泣いてしまいそう……

 ほたるはキュッと唇を結んで涙をぐっと堪えた。
< 122 / 199 >

この作品をシェア

pagetop