キスから始まる恋は甘くて苦い
「ごめん……なさい……」

 まひるが苦しげに声を絞り出したので、言い過ぎたことに気づいた雅也は手を離した。

「……ごめん」

 正義漢ぶって責め立てて、自分は何様のつもりなんだろう?

 誰だって打算が働くときはある。自分だってそうだ。まして、今のまひるは情緒が不安定気味だ。

 不安にさせた僕にも責任はあるんじゃないか?

 いくら妹のように思っていると主張したって、ふたりきりでいることを考えたら気が気ではなくなるだろう。
 立場を置き換えたら、まひるの気持ちは容易に想像できる。同じことをされたら何も思わないなんてことはきっとない。

 僕は、自分を正当化して……一番大切なことを見失っていたのかもしれない。

「雅也は、いつも正しいよね」

 ぼそりとつぶやき、まひるは立ち上がって踵を返した。

「まひる?」

 とっさに伸ばした右手が、部屋を出ていく彼女の毛先にふれて。

「待って!」

 指先が、そのまま虚空を掻いた――


< 131 / 199 >

この作品をシェア

pagetop