キスから始まる恋は甘くて苦い
「あら、ほたる」
「なんだ、帰るのか?」

 エレベーターのドアが開くとそこに両親がいた。仕事終わりの母を迎えに行って、そのまま一緒に車で来たのだろう。

「う、うん」
「面会時間もう少しで終わるんだから、まだいなさいよ」
「そうだね、一緒に帰ろう」

 有無を言わせず押し戻され、エレベーターは3人を乗せて上昇した。

「こんにちは。おじゃましてます」

 両親が先に病室へ入ると奥から雅也の声がした。入れ違いになったのだろう。

「こんにちは。いつもありがとうね」
「いえ、こちらこそ。まひるさんに会わせてくださって、感謝しています」

 ほたるが室内へ入ると、雅也は立ち上がって朝子にお辞儀をしていた。

「まあ、そう固くならずに」

 今度は父が眉尻を下げてゆるやかに笑う。
 両親は雅也のことをとても良く思っている。毎日見舞いに訪れる彼には申し訳ない気持ちでいっぱいでもある。

 もし、このまま……目が覚めなかったら?

 そんな不安を抱えながらも帰って来るのを待っている。
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