キスから始まる恋は甘くて苦い
「僕は、責められるのが怖くて黙っていた卑怯者なんだ」
「…………」

 頭を下げる雅也に、ほたるは何も言えなかった。
 雅也も同じように自分を軽蔑していたことを知り、まるで鏡を見ているような気分になって。
 全部ひとりで背負おうとしているみたいで戸惑った。

「ほたるちゃんは、自分のことを考えていいんだよ」

 もっと早く言ってあげれば良かった。そう思いながら目の前の少女を見つめる。

「自分のことって……」
「辰巳が好きなんでしょ?」
「えっ?」

 雅也の指摘に、蒼白だったほたるの頬に赤みが差した。わかりやすい彼女の考えていることは、疎い自分でもさすがにわかる。

「まひるに遠慮することはないんだよ」
「お姉ちゃんに、遠慮?」

 そんなつもりではなかったけれど、言葉にされると納得できてしまう。自分の感情に名を与えられて、ほたるはどこかホッとした。

「気持ちはちゃんと伝えた方がいいよ。僕が言えたことじゃないけど」

 雅也は皮肉っぽく笑んだ。できなくなってから気がつくなんて、愚かとしか言いようがない。

「怖いのはわかるよ。でも、そこから始まることもあると思う」
「雅也さん……」

 伝えたくても今の雅也にはそれができない。だから後悔しているし、そういう思いをしてほしくないという気持ちが伝わってきた。

 私は、伝えることができる。

 勇気を出せば……前に一歩踏み出せる。
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