キスから始まる恋は甘くて苦い
 ……ここにはいない。

 なんだか見られているような気がして、そそくさとその場を立ち去る。昇降口まで行ってみようと階段を下りようとしたとき。

「永瀬さん?」

 聞き覚えのある声がしてほたるは振り返った。

「どうしたの? 蒼に何か用でもあった?」
「真野先輩……」

 アウェー感のある空間に知っている顔を見つけ、ホッとする。

「蒼なら2限目で一緒だったけど、いないなら帰ったのかもね」

 まだ学校のどこかにいるかもしれないけれど。瞳は、親切に探してあげるほどお人好しじゃないわよと心の中で毒づいた。

「そうですか。ありがとうございます」

 丁寧なお辞儀に、艶やかな黒髪がサラサラと流れ落ちる。自分とは真逆なタイプのほたるを見ているとどこか惨めな気分になる。
 瞳は「なんで呼び止めちゃったんだろう」と、自分自身に首をひねった。

「じゃあね」
「あっ、ひとつお伺いしたいことが」
「何?」

 呼び止められた瞳が面倒くさそうに振り向く。

「試合の結果を教えていただけませんか」
「蒼から聞いてないの?」

 ほたるに向き直り、瞳は心外そうに目を見開いた。

「はい。聞いてないです」

 ほたるの返答に眉をひそめる。瞳は蒼一の様子がおかしかった原因がわかった気がした。
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