キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene32 受け止めてほしい

「真野さん」

 駅前の歩道橋からバスターミナルを見下ろしていた瞳は、後ろから声をかけられてビクリと身を揺らした。

「そんなに身を乗り出したら、落ちるだろ?」

 振り向くと、息を切らせたクラスメイトが心配そうに自分を見つめていた。

 まさか、走って止めにきた……とか?

 はたからみたら、そんなに思いつめたように見えるのだろうか。

「……それもいいかもね」

 お節介なクラスメイト――辰巳蒼一から視線を外し、瞳は秋の夕空を見上げた。

「いいわけないだろ」
「説教でもするつもり? ほっといてよ」
「いや、ほっとけねえだろ」
 
 目を合わせると蒼一は朗らかに笑った。重苦しい空気を察してあえてそうしたのかもしれない。

「辰巳くんには関係ないでしょ。それともあたしに気でもあるの?」

 キツイ言い方だとは自覚していたけれど、今の瞳には人を思いやる余裕はなかった。

「いや、クラスメイトじゃん。気はないけど」

 蒼一は辛辣な態度に怯むことなくさらっと受け流してきた。

「……心配しなくても飛び降りたりしないわよ。早く帰ったら?」

 バカにされたような気がして鼻白む瞳を、蒼一は慎重な眼差しで観察している。
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