キスから始まる恋は甘くて苦い
「なんか信用できないから、家まで送る」
「ちょっと、さっきから失礼じゃない?」

 冗談かと思って蒼一を見返すと、目は笑っていなかった。

 何かを見透かされそうな気がする……

 瞳は急いで目を逸らした。

「いいから、行くぞ」
「えっ? は、放してよ!」

 手を繋がれ、瞳は腕を引いた。けれど、力で敵うわけはなく観念して蒼一についていく。

 ホント、お節介……

 瞳は端正な横顔を見上げた。こんな場面を誰かに見られたら、学校で余計に孤立してしまいそうだ。
 
 そんなこと、どうでもいいか。

 つながれた手があたたかくて、瞳はこの成り行きに身を任せたくなった。
 蒼一とはあまり接点がなかった。まともに話したのも今回が初めてかもしれない。
 彼の周りには人が集まってくる。自分の有能さをひけらかすことなく、明るくて優しい人柄が男女関係なく好かれる最大の要因だろう。
 瞳はそんな蒼一を遠巻きに見ていた。顔も頭も性格も良いなんて、さぞ恵まれた環境で育ってきたのだろうと冷めた目で見ていた。

 なのに、あたしは……その優しさに甘えようとしてる。

 こんなに近くで蒼一を眺めたことがなくて、瞳は息を呑んだ。
< 144 / 199 >

この作品をシェア

pagetop