キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene33 あたしのために

 6歳年上の兄は活発で、生意気な自分の性格も相まってよくケンカをした記憶がある。けれど、仲直りしたあとは何事もなかったようにべったりするほど兄のことを慕っていた。
 だけどある日、突然のことに心の整理がつかないまま離れることになってしまった。
 それほど遠くに越したわけではない。母につれられて何度か会いに行ったこともある。けれど、日々の生活に追われて次第に顔を合わせることがなくなった。

 あたしは、お兄ちゃんにとって必要ない存在なのかもしれない。

 早くにそう自覚した瞳は自分に兄がいるということを忘れることにした。そうしないと寂しさに押しつぶされてしまいそうだった。
 数年後、兄から大学に合格したという知らせが入った。
 母と3人で食事をして帰り際に連絡先を交換して。「次はふたりで会おう」と言われて瞳は戸惑った。

 久しぶりに会った兄は快活で優しくて……やけに素敵に見えたから。
< 146 / 199 >

この作品をシェア

pagetop