キスから始まる恋は甘くて苦い
 瞳が中学2年生になる直前の春休み、ふたりで遊園地へ出掛けた。
 
 とても楽しかった。
 
 ……ドキドキした。

 それは、家族として過ごす時間を突然断ち切られたせい?

 憧れるくらいなら、大丈夫だよね?

 この頃の兄には付き合っている彼女がいたから、それ以上の気持ちを抱くことを無意識に避けていた。

 そう、あたしはまだ正気だった。

 事態が急変したのは、高校1年生の夏休み。
 母から、兄が進行性の胃がんを患っていると聞かされた。

 嘘……だったら良かった。

 倒れるまで痛みを我慢していたらしく、緊急搬送されて発覚した。肝臓にも転移があり、もう手の施しようがない状態になっていた。

 宣告されたのは、余命3か月。

 その言葉には全然リアリティがなかった。

 だけど、急激に痩せ細っていく兄を目の当たりにすると……否応にも現実を受け入れなくてはいけなくなる。

 兄は家族と話したがった。

 病室に家族みんなが集まると嬉しそうにすら見えた。
 彼女とは別れたと言われて……たまにひとりで見舞いに行って兄を独り占めした。

 死が兄を連れて行ってしまうとわかっているのに幸せだった。

 でも、兄と離れると反比例するように罪悪感が湧き上がってくる。血の繋がった兄を好きになるなんて、後ろめたくて仕方なかった。
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