キスから始まる恋は甘くて苦い
「これを預かれるのは私しかいなかったの。ごめんね、嫌な思いをさせちゃったかな」
「そんなことないです」

 大きく頭を振り、瞳は手紙を受け取った。

「じゃあ、私はこれで」
「えっ、あの……」
「私は大丈夫だよ。元気でね」
 
 神楽は意味深げに瞳を見つめると微笑んで手を挙げた。

「あ、ありがとうございます!」

 掛ける言葉が他に見つからず、遠ざかる背中をただ見送る。

「お兄ちゃんから……」

 不安と期待で瞳の胸は張り裂けそうに痛んだ。
 
 読みたいけど、読みたくない。

 すぐに開封できず、父の運転する車の中でずっと鞄の中を気にしていた。

「寄りたいところがあるから駅で降ろして」
 
 父も母も、娘のワガママを断る気力なんてなかったのだろう。ふたりとも疲れた目で瞳を見送った。

 ちゃんと読まなきゃ――

 トイレの個室に入り慎重に封を開けると……懸命に書いたことがうかがえる震えた文字が目に飛び込んできた。
< 149 / 199 >

この作品をシェア

pagetop