キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene34 時を超えて

 本気になったら怖気づくなんて、随分可愛いじゃない?

 瞳は、蒼一をどこか聖人のように感じていた。だから驚きを隠せなかった。

 永瀬さんは、すごいな……

 蒼一をただの男にさせた目の前の後輩を羨望の眼差しで見つめる。

 あたしなりに頑張ったつもりだったんだけどな。

 本当に付き合い始めると、瞳は進んでマネージャーとして剣道部へ入部した。
 そうして一緒にいられる時間を作って兄と出来なかったことを蒼一に求めた。
 手をつないだり、抱きしめてもらったり。
 夜に突然呼び出したり、長電話に付き合わせたり。
 蒼一はそれを全部叶えてくれたけれど、キスとそれ以上のことをしてくれることは一度もなかった。

『それは、本気になったらな』

 そういうところに蒼一の誠実な人柄が現れていた。

 ……意識してくれないかな?

 形だけでもカノジョになったのに、蒼一は自分だけをひいきすることはなかった。
 だから余計に甘えたくなった。振り向いてほしかったのかもしれない。
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