キスから始まる恋は甘くて苦い
 ――優しい味。

 すごく、懐かしい。

 あの日の空気が鮮明に思い出される。「絶品だから」と、兄が連れて行ってくれた。

 あの喫茶店の味にそっくり……

『瞳は昔からチーズケーキが好きだよな』

 向かいで微笑んでいる兄がフラッシュバックして。

『もう一個食べたそうな顔してる。瞳は食いしん坊だなぁ』

 からかうように頭を撫でてくれた感触まで思い出す。

『そんなに気に入ったんなら、また来ような』

 その約束が叶うことはなかったけれど……そのとき感じたあたたかい気持ちは心の中で息づいている。

 あのとき、確かに愛されてるって思えた。

 彼女のケーキはそのことを思い出させてくれる。

 そっか……あそこで働いてるんだもんね。

 まるで、時を超えて想いを届けてくれたような気がした。

 ――ありがとう。

 すっと胸のつかえが落ちたような感覚に、瞳は晴れやかな顔で涙を拭った。


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