キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene36 幸せになってほしい

 日直の仕事を終えて教室を出ようとした瞳は、バタバタと忙しない足音が聞こえて反射的に身を引っ込めた。
 別に身を隠す必要はないのだけれど、慌てた音からして関わりたくない類だと思ったのだ。
 瞳はそのまま教室に身をひそめドアの隙間から様子をうかがった。現れたのは蒼一のクラスメイトの女子で、見覚えのある紙袋を持っていた。

 あれは、永瀬さんの物と同じ?

 白地に黒い取っ手の袋は特に珍しいものではない。けれど、嫌な予感がして様子を見守る。
 彼女は向かいの教室に駆け込んだあと、ほどなくして去って行った。瞳はすぐにA組に入り込んだ。
 嫌な予感は的中してしまった。ゴミ箱に捨てられた紙袋を拾い上げてため息を吐く。

 そのまま突っ込むなんて、やることが雑すぎじゃない?
 
 中には洋服と白い箱が入っている。昨日ほたるからもらったものと同一で間違いない。まさかもらったわけではないだろう。後輩から奪ったとなると同級生としてかなり恥ずかしい。

 こんなことしても、蒼に嫌われるだけなのに。

 絵にかいたような嫌がらせは滑稽だけれど、笑い飛ばすことはできなかった。

 自分のことに必死なのは、あたしも一緒よね。

 瞳は苦笑いを浮かべ教室を出て小走りに剣道場へ向かった。
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