キスから始まる恋は甘くて苦い

Scene37 他愛のない日々

 省吾と別れてすぐに3年生の教室を調べ、思いつく場所を探したけれど……奪われたものは見つからなかった。
 時間を見ようとスマホを確認したら充電が切れていた。学校の時計を見ると、もう出ないとバイトに遅れる時間になっていた。

 どうしよう……

 見当もつかず、途方に暮れながら仕事をこなして家路を辿る。ケーキはともかく洋服を取り返さなくては蒼一に顔向けできない。

 明日もう一度学校を調べて、忘れ物の届けがないかも確認しなきゃ。

 仲直りどころではなくなってしまった。バスの速度がいつもより遅い気がしてもどかしい。うつむくと長い髪がサラリと落ちてきてほたるはハッと目を見開いた。

「ただいま」
「おかえりなさい」

 リビングに入ると母が笑顔で出迎えてくれてホッとする。

「……お母さん」
「うん?」

 浮かない表情の娘に朝子は首を傾げた。

「髪、切ってくれる?」
「えっ?」

 何を言い出すのかと思えば……突然の要求に思わずソファにのけ反ってしまった。
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