キスから始まる恋は甘くて苦い
「いいの? お姉ちゃんみたいになりたいって、ずっと伸ばしてたのに……」
「いいの。やっぱり邪魔になっちゃって」

 髪を引っ張られた感触を思い出して鳥肌が立つ。ほたるは無意識に頭をさすった。

「そっか。じゃあ、着替えておいで」

 せっかく伸ばしたのにもったいないと思いながらも散髪の準備を始める。着替えを済ませたほたるを椅子に座らせ、朝子は髪切りバサミを手に取った。

「どのくらいにする?」
「バッサリいっていいよ」
「適当なこと言わないの」
「じゃあ、このくらい」

 ほたるは顎のあたりに手を当てた。

「本当にいいのね?」
「うん。お願い」

 ハリのある黒髪にハサミを入れる。娘の髪を手入れするのは久しぶりだ。

 ほたるはお父さんに似たのね。

 焦げ茶でやわらかい自分の髪質は長女のまひるに受け継がれた。

 お互いにうらやましがってたな。

 姉妹のないものねだりは、贅沢な悩みだと思いながら微笑ましく見守ってきた。

 そんな他愛のない日々が、早く戻ってきますように――
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