キスから始まる恋は甘くて苦い
「蒼一さん!」

 家の前に、自転車にまたがる蒼一がいた。驚いたような顔で見返してくる彼に駆け寄りほたるは目を潤ませた。

「いや、その髪……」

 近づいてくるほたるを凝視し、手を伸ばす。

「久しぶりに会ったと思ったら……驚いたな」

 首筋にふれようとして蒼一はその手を止めた。数日前、彼女に何をしたか……忘れたわけではない。

 何事もなかったんだから、それでいい。

 なかなか既読にならないメールを疑問に思い、つながらない電話に不安を覚えて。ここまで来てしまったけれど、無事を確認できたらすぐに帰るつもりだった。

「蒼一さんに謝りたいことがあります」
「えっ? なんだよ……」

 急に神妙な面持ちになったほたるに、不安感が加速する。つきまといはやめてくださいとか勘違いウザいとか……そんなことを言われるんじゃないかと身構えてしまう。

「借りた服を失くしてしまって……」
「服?」
「はい。蒼一さんが貸してくれた洋服です」
「あー……そのこと?」

 蒼一は胸を撫で下ろした。ほたるは今しがた想像したようなことを言う子じゃないって知ってた……と、調子のいいことを思う。

「ごめんなさい。でも、明日もう一度探してみます」
「いや、失くなってねえけど?」

 自転車のカゴの中にある紙袋を指差され、ほたるは首を傾げた。
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