キスから始まる恋は甘くて苦い
「意識し始めたのは、キスされてからですね」
「ふうん。キスは嫌じゃなかったんだ?」

 コクリとうなずいてくれて安堵する。実は嫌でしたと言われてしまったら目も当てられない。

「自覚したのは蒼一さんの家で勉強を見てもらったときです」
「……マジで? むしろ嫌われたと思ったのに」
「あのときは自覚したばっかりで。心の準備ができてなかっただけです」
「そういうこと……」
 
 あのときは拒絶されたことで動揺していたから、そこまで考えが及ばなかった。

「私たち、ずっとすれ違ってたんですね」

 ほたるは眉尻を下げ、安堵と困惑が入り混じったような顔をする。

「俺のこと、よく信じてくれたよな」
「蒼一さんはいつも優しかったから」
「そういう言い方されると、今後誰かに騙されたりしねえか心配になるな」
「大丈夫ですよ。これでも人を見る目はあるんです」

 謎の自信に蒼一は吹き出した。「どうして笑うんですか?」と真面目な顔で質問もされてしまい笑いを抑えられない。

 他愛のないこの時間も、愛おしい。

 好きだから、この関係を壊したくない。
 そう思っていたけれど……壊さなければ得られなかったものがある。
 
 俺の代わりに、ほたるが勇気を出してくれたから。
 
 そのことは後悔している。先に告白できなかった情けない自分にうんざりもするけれど。

 これからは、俺がキミを幸せにするよ。
 
 蒼一は心の中でひっそりと誓い、つないだ手をぎゅっと握りしめた。
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