キスから始まる恋は甘くて苦い
「今後、何事もないよな?」

『あの人を責めないで』とほたるには釘を刺されたから我慢しようと思ったけれど、やっぱり腹の虫は収まらない。今までの素行が悪い印象だっただけに、釘を刺しておかないといけないとも思った。

「……うん」

 あまりに鋭い眼差しに田中はうなだれた。ただ振り向いてほしかっただけなのに……他人を蹴落としてきた結果がこれなのだ。
 向けられた敵意が息苦しくても、今さら後悔しても取り返しがつかないところまで来てしまった。

「でも、許しはしないけどな」

 顔を上げた田中に冷たい視線を送ると、彼女は目に涙を溜めてうつむいた。

 さすがに懲りたか?

 彼女が自分に近づこうとする女子に圧力をかけていたことは、蒼一もなんとなく気づいてはいた。
 今回のことがあって、ハッキリと自分への好意があることにも確信を持った。
 雰囲気がどことなく誰かに似ていると思ったのも、元カノである瞳の髪型やメイクを真似をしているからだったのだ。

 まあ……めんどくさいのは俺も同じだよな?

 人のことは言えないと苦笑して、さっき別れたばかりの恋人のことを想った。
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