感情が味で分かる令嬢は、偽りの愛を見抜きます~婚約者は腐った生ゴミ味、冷酷な第二王子は極上の味でした~【短編】
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侯爵令嬢の毒薬発言のあとは大騒ぎになった。
直ちにワインの中身が調査され、本物の毒薬と分かると第一王子は衛兵に捕らえられた。
速やかに証拠品も確保されて、男爵令嬢をはじめ第二王子毒殺未遂に関わった者たちは全員が罪を問われた。
全てが終わった今、学園卒業を待たずに王太子となったアルトゥールは、兄の元婚約者と王宮で茶会を開いていた。
「全部君のおかげだ、シャルロッテ嬢。本当にありがとう」
「お……恐れ入りますわ、殿下」
相変わらずアルトゥールの放つ言葉が暴力的なまでに極上の旨味を運んでくる。シャルロッテはふやけそうな表情をかろうじて押し止めていた。
アルトゥールは思案するように少し視線を彷徨わせてから、改めてシャルロッテを真正面から見つめた。
「その……一つ聞いていいか?」
「なんでしょう」
「君は兄上の婚約者だった。……だが、なぜ兄上ではなく私の味方をしてくれたんだ?」
「そっ……それは、その……」
言い淀む彼女に、彼の視線が純真なまでにまっすぐに貫いてくる。強い双眸に、彼女の脈がどきりと跳ねた。
「も……も、元・第一王子は、わたくしを犯人に仕立て上げようと……」
早口で言い訳を並べようとするが、アルトゥールの真摯な視線にシャルロッテの中にある何かが吹っ切れた。
すんと居住まいを正して、彼を見つめ返す。
「いえ……。あの、信じられないお話かもしれませんが、聞いてくださいますか?」
「もちろんだ」
「実は、わたくし、他人の感情が味覚として感じる異能を持っているのです……。それで、アルトゥール殿下の感情を読み取ってしまいまして……」
その瞬間、アルトゥールは目を見張って表情を凍らせた。
シャルロッテははにかむように頬を染めたあと、唇を引き結んで彼を見つめた。
「わたくしは、エドゥアルト様ではなく、アルトゥール殿下を信じようと思いましたわ」
「っ……!」
数拍の沈黙のあと、アルトゥールは手で赤い顔を覆いながらシャルロッテに尋ねた。
「……私の言葉の味は、どうなんだ?」
「それはもう、これまで味わったことのない究極の旨味でしたわ」
「……ちなみに、兄上は?」
「腐敗した生ゴミを煮詰めたような超超超超ゲロマズでしたわ」
「そうか…………っぷ、くくっ……」
アルトゥールは顔を伏せ、肩を揺らしていた。
「笑いごとではありません。わたくしにとっては、死活問題だったんですから」
仮にエドゥアルトと婚姻すると、毎日腐った食材を無理矢理口の中に突っ込まれる生活を送るはめになったのだと、シャルロッテは力説した。
アルトゥールはついに我慢できずに、はははっと声を出して笑った。
二人のあいだには、すっかり穏やかな空気が流れていた。
「では、シャルロッテ嬢は私の気持ちを既に知っているということだな」
「えっ……」
「ならば、話が早い。改めて私の君への想いを聞いてほしい」
「それは、その……」
シャルロッテの脈がどんどん速くなっていく。頭の隅で漠然と考えていたことが実際に現実に起こりそうで、にわかに顔の熱が上昇した。
アルトゥールは、シャルロッテの長い髪を優しく耳にかけながら囁く。
「私は、貴方のことを愛しています」
次の瞬間、シャルロッテはこれまで生きていて経験したことのない美食の大洪水に呑まれて倒れた。


