銀河の雫
これはお見合いなんだ。

気持ちを伝えることに何の障害もない。

そうだ……

彼女に本当の気持ちを打ち明けよう。

「さぁ、そろそろ出発しますよ」

静かに動き出す木製の小舟。

船頭さんに促されて空を見上げる。

そこには満天の星空が広がっていた。

「地元に好きなとこなんてないって、さっき言いましたけど、好きなもの見つけました」

彼女は、夜空を指差した。

「こんな銀河、東京では見えません」

「はい、仙台でもこんなにたくさんの星は見えません」

その空の美しさに、ふたりでしばらく夜空を見上げた。

「……ずっと、ここにあったはずなのに、あまりにも身近過ぎて気が付きませんでした」

俺はうなずいた。

そうだ。

あの頃は、ただ、ただ、つらいだけの毎日だと思っていた。

けれど俺は、すぐ傍に大切なものがあったのだ、と、いうことに気が付いた。

夜空を埋め尽くすような、この星々の煌めき。

俺は一生、この空を忘れることはないだろう……


「では、そろそろ、一曲唄わせていただきます」

パチパチパチ……と、拍手をする。


船頭さんが、げいび追分を唄い始める。


透き通った声が、深い谷に響いては消えていった。

暗闇の中、水面に霧が湧き、揺れる舟を包み込む。




……視界の先に、オレンジ色の光を灯した桟橋が見えてきた。


「もう、着きますね」

彼女がぽつりと、つぶやいた。

なぜか、彼女も離れたくないと感じているように思えた。

「そうですね、週明けから東京で仕事ですか?」

「はい。そちらは?」

「僕も明日、仙台に戻ります」

「そうですか……」

「……」

そのとき、母から耳打ちされたことを思い出した。


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