銀河の雫
「男運ないと言えば、ここの新しい所長、相当ヤバいらしいよ」
「えっ……ヤバいって何、どういうこと?」
「小林さんに聞いたんだけどね」
「あぁ、情報通の小林さん?」
「うん、うちらが現場デビューする日からの新所長って……」
私の耳元に顔を寄せて小声で言った。
「……パワハラ、モラハラが酷くって、派遣が次々に辞めてくらしいよ」
「えぇっ!?」
彼女は、何度も大きくうなずいてみせる。
「その新所長、課長から急遽、所長のポストに大抜擢よ」
「えっ、副所長を飛び越えて?」
「そう。幹部候補の超エリート。ずっと海外赴任して、二年前に、ここに来たらしいよ」
「つまり……そのエリートの気まぐれで、派遣社員が次々に辞めさせられてるって話?」
バン!
と机を叩き、思わず立ち上がった。
「上にはペコペコして、要領良く立ち回って出世? 立場の弱い派遣には八つ当たり?」
「ちょっ……声が大きいって」
薫さんは周囲を見渡し、私は慌てて座り直した。
「そんなクズ野郎、絶対にチビでデブでハゲで、超絶性格悪いに決まってる!」
「あはは……クズ野郎って、珍しく毒付いてるね、でもまぁ、確かに」
「ねぇ、困るよ私、扶養家族がいる上に派遣切りに遭ったばっかで、やっと職にありつけたのに、またぁ?」
思わず、彼女の袖口を両手でぎゅっと掴んだ。
「まぁ……そんなお偉いさん、派遣のうちらには接点ないでしょう?」
「そっか……」
「そうだよ、直属の上司じゃないから、目をつけられないように、当たり障り無く行けば大丈夫じゃない?」
「そっか、それもそうだね」
我に返り、ごめんという感じで薫さんから手を離した。
それにしても……
所長がパワハラにモラハラ?
派遣社員が次々辞めていく?
今回の派遣先も前途多難。
もう、めまいがしそう。