銀河の雫
ミーティングルームの扉が開いた。

談笑する副所長や課長たちの後ろから、所長が静かに出てくる。

「なんだ、君らまだいたのか」

「……あ、はい」

青山さんが弾んだ声で答える。

ちらっと目線をやると、その頬はやや紅潮しているようにも見えた。

「あの……すみません、私の仕事が遅くて、青山さんに見てもらっていたんです」

「青山さん、自分の仕事はもう終わったの?」

立ったまま、机上を片付けながら、淡々と問いかける。

「はい、私は終わりました」

「なら、もういいよ」

「えっ、でも……まだ、月浦さんが」

「私が教えますので、もう帰っていただいて結構です」

「でも……」

青山さんは、なにか言いたげだった。

「……分かりました。お先に失礼します」

「お疲れ様」

所長は、ちらりと青山さんを見て答えた。




「……月浦さん、何に躓いてる?」

横にかがみ込み、モニターを覗き込む。

顔が近くなり、思わず息をのんだ。

「あっ、ここで止まってたんですが、先ほど青山さんに教えていただきました」

「研修で習わなかったの?」

「……いいえ、習ったのを思い出しました。すみません……」

自己嫌悪で声がだんだん小さくなる。



フロアはしんと静まり返り、見渡すと、誰も残っていなかった。



皆は定時上がりだから、手当はつかない。

私は、仕事が遅くて残業してるだけなのに、残業代がついて他の人より多くの給料をもらうことになる。

そんなのどう考えてもおかしい。

焦りで変な汗が出てきて止まらない。


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